第2話「未知との遭遇?メールが未来から届いた日」
「こんにちは〜、マー先生ですよね?」
ドアを開けた女性は、ぱっと見20代にしか見えない。だが、自己紹介によれば50代の“未知さん”。マー先生は少し目を丸くしながらも、微笑み返す。
「今日はどんなご相談でしょう?」
「ちょっと変なことが起きてて……メールが、未来から届いたみたいなんです」
未知さんが指さすノートパソコンには、確かに「8月9日 9:00 受信」と表示されたメールが。だが今は、まだ8月8日の午後2時。
「未来から届いたって、これって時空を超えた通信じゃないですか? もしかして私って、宇宙人だったりして……ふふふっ」
そう言って笑う未知さんの服装も、どことなく異星感がある。シルバーに近い光沢のあるブラウス、きらりと光るアクセサリー。まるでSF映画から飛び出したようだ。
パソコンを確認しながら、マー先生は丁寧に尋ねる。
「念のためですが、時刻設定って確認されたことありますか?」
「え? なんですか、それ?」
画面右下を見ると、表示は「2025/08/09 14:05」。確かに“未来”だ。Windowsのシステム日付が1日ズレているのだ。
「これ、設定が1日早くなってるんですよ。だから、明日のメールが“今日”に届いたように見えちゃったんです」
「えぇっ……じゃあ、私はやっぱり宇宙人じゃないのね……つまらないわね」
未知さんは肩を落としたが、すぐに笑って言う。「でも、なんでそんなことになったのかしら?」
そこが面白いところだ、とマー先生。さらに深掘りして調べていくと、原因は数日前に実行された「海外とのZoom会議」。そのとき、時差調整のためにパソコンの時刻が変更されたまま戻されていなかったのだ。
「地球の時差って、けっこう曲者ですね」と未知さん。
「ほんとに。宇宙から見たら、もっと面倒かもしれませんね」と、マー先生も返す。
設定を戻し、パソコンは正しい時刻へ。未来メールも、ちゃんと“未来”に戻った。
「先生、すごいですね! あっという間に解決しちゃった」
「いえいえ、未知との遭遇に備えるのも、日々の勉強のおかげですから」
未知さんは、ふと真顔になってこう言った。
「ねえ先生……もしかして私、本当にどこかの星から来てるのかもって思ってるんです」
「そうですか。それなら、僕はあなたの“地球担当サポーター”ということで」
2人は笑い合いながら、コーヒーをすする。穏やかな午後の光が差し込んでいた。
帰宅途中、マー先生のスマホが鳴った。メッセージにはこう書かれていた。
「プリンターの動きが逆になって、紙が吸い込まれていくんです。お時間ありますか?」
……新たな珍事件の予感が漂う——。